はじめに
インターネットは世界をつなぐ大変便利なネットワークであり、この20年ほどで社会インフラとしての地位を獲得しました。
そんなインターネットですが、常時安定稼働しているかと思いきや、実は結構な頻度で「壊れて」います。
ThousandEyes が2019年のインターネット障害をまとめたレポートを出していたので、読んだ内容をまとめておきます。
要約
インターネットの停止はビジネスに大きく影響する。インターネット公開しているWebサービスが影響を受けることはもちろん、これまでMPLSを使ってプライベートネットワークを構築してきた企業が、インターネットをエンタープライズバックボーンとして使い始めたことで、インターネットの停止が企業に影響を与える可能性がある。このレポートでは、2019年に発生した大きなインターネット障害を紹介する。
2019年の大規模インターネット障害
2019年5月13日、China Telecom
障害時間:約5時間
中国本土だけでなく、シンガポールのChina Telecomネットワークや、アメリカにも影響を及ぼした。
Apple, Amazon, Microsoft, Slack, Workbay, SAPなど100以上のサービスが影響を受けたという。
2019年6月2日、Google Cloud
障害時間:約4時間
GSuite, YouTubeなど、Googleのアプリケーションに影響が出た。
Googleによる障害報告。
2019年6月6日、WhatsApp
障害時間:記載なし
原因:BGP Route Leak。China TelecomにWhatsAppのルートが吸い込まれた。
2019年6月24日、CloudFlare
影響時間:約2時間
原因:BGP Route Leak。Verizonによるものとされる。
CcloudFlare CDNを使う、DiscordやNintendo Life、Redditが影響を受けた。
2019年7月4日、Apple
影響時間:約90分
原因:BGP Route Flap。
2019年9月6日、Wikipedia
影響時間:約9時間
原因:DDoS
インターネットは壊れる
あきみちさんの書いた『インターネットのカタチ―もろさが織り成す粘り強い世界―』という本にも書かれていましたが、インターネットは日々壊れています。
2019年の障害にBGPリークが起きていたりしますが、人が運用しているので結構起きがちな障害です。
私たちの身近なところであれば、2017年にもGoogleがBGPリークで世界的に影響を及ぼしたりしてます。実際に影響をうけて、記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。
インターネット障害は、BGPリークのような論理的なものだけが原因ではありません。
海底ケーブルの切断なんかも結構起きます。
先日もイエメンにつながる海底ケーブルが切断されてインターネット接続に支障が出ているとニュースになっていました。
海底ケーブルは、人の手によって故意に切断されたり、サメが食いちぎったりと結構維持が大変みたいです。
切れた場合、イエメンのように冗長化が不十分な場合は全断もありえますが、通常は冗長化されているので迂回路を通ることになります。
迂回路を通る場合は、通信遅延につながったりします。
話はそれますが、海底ケーブルマップが公開されていますので、「日本はどことつながってるんだろう」と見てみるのも楽しいかもしれません。
海底ケーブルだけでなく、陸路のケーブルもよく切れます。
日本だとあまりないですが、インドのような国では地下に埋まっているケーブルを工事の際に誤って切断してしまう、みたいなことが結構あったりします。
地下のケーブルの場合は事故もあれば地震で切れることもあります。地上のケーブルも同様です。
インターネットは「カタチ」が目に見えないので、ついつい壊れるなんてありえないと思ってしまいがちですが、その裏側はすべて物理的なケーブル、ルーターなどでできていることを忘れてはいけません。
企業ネットワークのインターネット利用が進んでいますが、インターネット障害は意外としょっちゅう発生していますし、発生した場合は誰も手出しできません。
そのようなリスクがあることを許容した上で、うまく付き合っていく必要があるでしょう。
以上