おれさまラボ

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Blissfully 社による SaaS 利用に関する調査(US)を読んでみた

はじめに

顧客たちがそれぞれの企業内で使うSaaS利用の管理を助けるスタートアップである Blissfully という会社が、毎年 software-as-a-service (SaaS) に関するレポートを出しているそうです。

解説を読んでみたのでメモを残しておきます。

参考:2020 SaaS Trendsレポートまとめと考察|takeru55555|note

Blissfully 社のついて

"blissfully" は「この上なく幸せな」という意味の英単語だそうです。

また、Blissfully 社はサーバーレスを推進している会社でもあるようです。

参考:Blissfullyが全てをサーバーレスで行うと決めた理由 | TechCrunch Japan

"SaaS Graph" と呼ばれる仕組みで従業員が使っている SaaS サービスを可視化/コントロールするサービスを提供しています。

CASB にカテゴライズされるのかな?

参考:Total SaaS Management, Visibility and Optimization | Blissfully

レポートの内容

SaaS Trends Report 解説のメモです。1,000 社以上の企業の 10 年以上にわたる SaaS 支出と利用データを分析しているそうです。

企業規模を以下の3つに分類しています。

スモール・ビジネス(別名SMB) 従業員数 1~100 人の企業
ミッド・マーケット(AKA MM) 従業員数 101~1000 人の企業
エンタープライズ 従業員数 1,000 人以上

Introduction: About this Report

SaaS はビジネスに必要不可欠となっており、旧態依然とした会計事務所から最先端の人工知能ベンチャー企業まで、また家族経営の小規模店舗から大規模な多国籍企業まで使用している。

SaaS の利用と需要はここ数年で急激に増加しており、2020年以降もこの傾向は続くだろう。

2019年のアニュアルレポートでは2つの重要なトレンドが見えた。

  • 2017-2018 の間に中規模企業の 39% がアプリを入れ替えた。
  • SaaS アプリの選択は部門で分散化が進んでいる。

2020年のアニュアルレポートでは次のトレンドが見えた。

  • 2018-2019 の間にあらゆる規模の企業で SaaS アプリ利用が前年比約30%増加
  • 利用されているアプリの数も約 30% 増加
  • 重複したサブスクリプションは 80% 増加
  • 放置されたサブスクリプションはあらゆる規模の企業で 100% 増加

この結果は、適切な SaaS 管理ができていないことを示し、管理の必要性が高いことも表している。

2018年と比較して1社あたりの SaaS 製品への支出が 50% 増加している。

1社あたりの利用アプリのユニーク数は前年比で約 30% 増加。

平均的な小規模企業は 102 種類のアプリを使用。

中堅企業は1社あたり平均 137 種類のアプリを使用。

企業全体では平均 288 種類のSaaSアプリを使用。

SaaS の利用料が徐々に上昇していることが伺える。

  • 支出の増加がユニークなアプリの数を上回っていることから、既存ベンダに多く支出している(ユーザ追加、機能アップグレード、サービスプランの追加など)
  • ベンダ統合(M&A など)により特定ベンダへの支出が増えている ※利用ベンダの総数が減少している

SaaS の解約率は毎年 30% 以上。

時間の経過とともに多くのアプリは買収や内部拡張によって提供機能数を増やしている。

The SaaS Graph: A Better Way to Understand the SaaS Data Model

企業で利用されている SaaS アプリの数(apps per company)は少数でも、人とのつながりを考慮(app-to-person connections)するとその数は急増する。つまり、同一の SaaS アプリを企業内で複数の人/チームが契約している状態。

企業規模 従業員数 apps per company app-to-person connections
スモール・ビジネス -100
ミッド・マーケット 101-999 185 4,406
エンタープライズ 1000- 288 21,580
  • 企業が大きくなるほど、アプリと人との接続が複雑になる
  • 有料/無料に関わらずさまざまなリスクが生まれる
    • 脆弱なパスワード
    • 緩いセキュリティ設定
    • アカウント共有
    • その他のセキュリティリスク
    • 離職時のアカウント無効化忘れ(セキュリティリスク+無駄なコスト)
    • GDPR に代表されるデータプライバシーへの対応の難しさ

→ 上記リスクを軽減するために SaaS アプリとユーザーの接続状況を追跡し、それらの接続がデータとどう関係しているかを理解して、適切なセキュリティ対処を行う必要がある。

SaaS Waste: Nearly Doubling Year over Year

有料アカウントを適切に管理しないと無駄金を使うことになる。

  • アカウントの重複
  • 退職後の放置アカウント

重複アプリケーションは 2018-2019 で 80% 増加。企業全体では1社あたり 3.6 アプリ、エンタープライズでみると 7.6 アプリもの重複が発生している。

放置アカウント/サービスはあらゆる規模の企業で 100% 増加。2019 には 1.4 アプリだったのが、2020 には 2.6 アプリに増加。エンタープライズで見ると 7.1 アプリ、ミッド・マーケットが 4.3 アプリ、スモール・ビジネスが 1.4 アプリとなっている。

SaaS Spending by Department

省略。どの SaaS ベンダがどの分野で伸びているのか知ることができる。

Key Takeaways for SaaS Ecosystem Stakeholders

SaaS 市場はまだ黎明期。

SaaS だけで企業運営している企業は全体の 25%。

上位 1,000 社の SaaS アプリのうち、SOC 2 に準拠しているのはわずか 18% にすぎない。ガバナンスとコンプライアンスの面で大きな課題があるといえる。

さらに、GDPR や CCPA のような地域ごとに異なるプライバシー規制に対して、企業がセンシティブなデータをどのように管理するかも大きな課題である。

従業員は 10 個以上の SaaS アプリを使用していると考えて良い。人、アプリ、そしてそれらの関係を管理するための調整課題(SaaS Graph)は指数関数的に複雑になる。

About Blissfully

Cisco 社は 2021 年までにワークロードの 75% が SaaS のみになると予測している。

おわりに

SaaS 利用は伸びてはいるんだろうなという肌感覚はありつつも、実際のデータを見たことはなかったのでオモシロイと思った。さまざま出てきた数値も多少は提案に使えるかなぁという印象。ただ US のデータなので微妙かも。日本市場の調査もあればぜひ読んでみたいですね。